毎年ES提出の時期になると、学生さんからESの添削をお願いされるケースが増えます。一つ一つ読んで中身についてコメントするのは正直面倒だなという思いもあったのですが、数をこなしていくうちに、色々な学生さんの人生のストーリーや思いに触れる事の面白さを感じています。 ただそんな中で、思いがこもっている事は伝わってくるものの、それがうまく表現できていないケースも多く見られます。そして結局どのケースにおいても最終的に行き着くのが、「読み手目線」に欠けている、というポイントです。これを抑えれば皆さんが自分でESを書き進めたり、自分の書いたESを改めて見直したり、自己添削してみたり、という場面で大きく役に立つ指針となるはずで、で、逆に言えばこれさえ理解していればESに関してあまり他にたくさん言う事は無い、というくらいに大事な話なのでここでみなさんに共有させて頂きたいと思います。 ESは一つのコミュニケーションである「そんなの当たり前だ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、大前提として、ESというのは企業(志望先)と志願者の間の一つのコミュニケーションです。 敢えて私がここで「コミュニケーション」という言葉を使ったのには、明確な意味があります。もしかすると、ESは「作文」だ、という例え方をされる事もあるかもしれませんが、私はこれに対しては「NO」だと思います。なぜかというと、作文という行為はあくまで一方的であり、ESというのは双方向的なものであるためです。だからこそ、双方向的な意味合いを持つ「コミュニケーション」という言葉を使いました。ESのどこが双方的なんだろう、学生が書いた文を一方的に提出して企業がそれを見て終わりじゃないか、そう思われた方もいるかもしれませんが、その考えには一つの大事な視点が欠けています。 それは、ESには企業から設問が与えられている、という点です。実は、多くの学生さんが見落としがちなのが、この「設問」の存在です。実はESの設問には企業側のメッセージが込められている事が多いのです。これを見落としたままESを書き始め、知らず知らずのうちにかなり企業からすると期待外れな内容になってしまっているであろうESをこれまで沢山見てきました。だからこそ、「設問をしっかり読んでください」というアドバイスを数多くの学生さんに言ってきました。(大学受験などの国語の授業でも先生がよく言ってそうな話ですが、これも出題者の意図を汲み取って答える、という意味ではかなり似通ったポイントかもしれません)少し話を整理するために、企業のESに対してどの様に向き合えばよいか、図も使いながら解説していきましょう。 上の図はESを書くにあたって行われる(べき)「コミュニケーション」をイメージ化したものです。まず企業側は、採用したい人材像などから、学生のそういった側面が引き出せるようなの設問を練ります。そこには明確な「〇〇を聞きたい」という考えが、裏にあります。もしくは、その質問で学生の「〇〇を試したい」という意図もあったりもします。一部の企業では奇をてらった様な質問や、その企業の独自性の強い設問がありますが、それらは特に「試したい」という意図が強いもの、つまり篩(ふるい)にかけに行っているものです。そういった問題は皆さんからしてもあまり見ないものなので慎重に構えて回答をされるかもしれませんが、意外に要注意なのが、「ガクチカ」に代表される、典型的な部類の設問です。こういった部類の質問は、パッと読んだ印象で「この設問はガクチカだ、ガクチカのテンプレを用意してあるから、それを出してしまおう」という思考回路になりがちです。ですが、微妙な設問の文字面によっては、広義に言う「ガクチカ」でもポイントが変わる事があります。 具体的に、広義では「ガクチカ」に分類される様な設問の例を以下にいくつか挙げてみます。それぞれ、文面が多かれ少なかれ変わっています。この様な文面の差によって、ニュアンスや意図している内容が少しずつ異なります。具体的に見ていきましょう。 1.「学生時代に注力した事について教えてください。」 一見「ガクチカ」と同類の設問と言っても、少しずつニュアンスやポイントが変わっているのがお判りいただけたでしょうか。設問に対して、しっかりとその意図を汲み取り、それに適切に且つ効果的に返すという事ができるか、実はそんな所もポイントになっているのです。日々の会話と同じく、キャッチボールであり、それこそが「ESは一つのコミュニケーションである」という事の意味です。
次回の記事では、具体的なコミュニケーションの方法について更に深堀りしていきたいと思います。 SU
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